とんタンの味噌焼劇場

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山あり谷あり。とんタンの味噌焼劇場

~ にちにちの看板メニュー成長秘話 ~


「こんなの食べられないわよ!」

『とんタンの味噌焼』を前にお客様から言われたひと言。今でも忘れることができません…。

はじめまして。日日是耕日の女将、政友智恵美です。
女将になってはや8年。この店をするまでは雑誌のライターをしていました。
グルメ情報誌の仕事も多く、色んなお店を食べ歩いては原稿を書いていた私が今は逆の立場になるなんて…。
人生って分からないものですね。
さて、そんな私が今回お話させていただこうと思っているのが、うちの看板メニュー
『とんタンの味噌焼』の秘密。
今ではようやく人気メニューとして認知されつつありますが、
今日に至るまでの道のりはそれはそれは長く険しいものでした。

『とんタンの味噌焼』が生まれたのは今から約8年前。
この店をオープンする際に「うちオリジナルの看板メニューを!」という思いのもと店長によって考えられました。

タンに目をつけたのは、豚肉料理店にしようと思った際、
「普通の部位を使っていてはおもしろくない。
ちょっと変わっていて、とびきり美味しいものはないか…」と考えた末、
「牛タン料理はあるけど豚タン料理は見たことも聞いたこともない。
タンはもともと淡白な味なので、ここに旨み成分を加えれば
何か新しいものが生まれるんじゃないか」 という発想をもとにタンで何か作ろうと思ったのです。

ところが!です。
そうは言ったものの、豚タンを“焼く”以外で調理をしたことがなかった店長。悩みました。
最初は、タンをステーキ風に焼いてソースをかけてみたり、シチューのように煮込んでみたり、
香味野菜と蒸してみたり…。本当に色々やりました。
なにせあまり親しみのない食材だけに“どんな調理法がいいのか”
“相性のいい素材は何なのか”、など分からないことだらけ。
そんな中、味噌に漬け込んでおいたタンを焼いてみると、これがビンゴ!!!
味噌の香ばしい風味とタンの旨みが見事にマッチし、お酒との相性もよかったんです。
「よし!これでいこう!」
なんとかうちオリジナルのタンメニューが出来上がった瞬間でした。
「やっと完成した~。この味ならお客さんもきっと喜んでくれるはず!」と思ったのもつかの間、
実はここからが大変だったんです。

店長が最初そうであったように、お客さんも豚タン料理なんて馴染みのない代物。
タンをお勧めしても、
「豚のタンってちょっとクセがありそう…」とか「何か硬そう…」と言ってなかなかオーダーしてもらえませんでした。

そんな矢先、ある事件が発生したのです。
多くのお客様でごった返すランチタイムのことでした。
「こんなの食べられないわよ!」 とんタンの味噌焼を前にお客様がこう言われたのです。

何事かと思い聞いてみると、「タンの上に髪の毛のようなものが異物がついている」とのこと。
これは大変!すぐに取替えないと!と思い、よぉ~く見てみると確かに何かついている。
そっと触ってみるとそれは、『とんタンの味噌焼』に添えられている白髪ねぎが
何かの拍子でタンと一緒に焼かれてしまい、髪の毛のように見えたのでした。
そこで私は「髪の毛じゃないんで大丈夫ですよ」と言いましたが、お客様は箸に手をつけようと
されません。参ったなぁ…、これは新しいものをお出しするしかないな…、と思い
「新しいものと取替えさせていただきましょうか?」と申し上げると
そうしてほしいとおっしゃる。
そこでその旨を厨房に伝え、新たなタンを焼いてもらうことにしました。

やっと新たなタンが焼き上がり、「ああこれでやっと食べていただける」と思い、お持ちすると
それでもお客様は箸に手をつけようとなされない。
「なんで? 今度は何も入ってないはずなのに…」
私はもうどうしてよいのか分からず、うろたえました。
そして恐る恐るたずねるとお客様はこうおっしゃったのです(以下、お客様と私の会話)。

「先ほどは大変失礼しました。まだ何かお気に召さない点がございますか?」
お客様 「これ新しく焼いてくれたといったけど、さっき髪の毛が入っていたものを温め直しただけじゃないの? 」
「いえいえ。新たに焼かせていただいたものです。何か気がかりな点が?」
お客様 「だって限定10食なんでしょ? 私がオーダーする際に最後のひとつだって聞いたわよ。それなのにまだあるなんておかしいじゃない!」
「そうじゃないんです。確かにお客様のオーダー分が最後のひとつだったんですが、
実は夜のお客様用にストックがありまして、そちらから焼き直しをさせていただいたんです。
タンは仕込むのに大変手間と時間がかかるのでお昼は限定とさせていただいてますが
夜の営業用に少し余分があるんです。ですのでご安心してお召し上がりください」
お客様 「そうなの…。分かりました。じゃあ…」

という具合でした。

“タンは仕込むのに大変な手間と時間がかかるため、昼は10食しかお出しできないということ”
“実は夜のお客様用にストックがあるということ”
“タンについていた髪の毛のようなものは、添えられている白髪ねぎだということ”

そういった私たちが当たり前と思ってしまっていて、必要なことを、お客さんに伝えきれていなかった…。
そんな状態では、豚タン料理なんて馴染みのない代物はなかなか注文してもらえないはずだ…。

そこからでした。地味な【とんタンの味噌焼推進運動】が始まったのは。
「豚タンについてもっと知ってもらおう!」
できるだけ丁寧にタンについて説明し、ご来店いただいたお客様全員に一口でいいから召し上がって
いただこう。 そうすれば必ず『とんタンの味噌焼』の魅力に気づいていただけるはずだ!

そんな思いのもと、初めてご来店いただいたお客様には『とんタンの味噌焼』がどんなものか、
またその美味しさについてできるだけ説明させていただくようにしました。
みなさんとても温かい方が多く、はたまた私の必死な様子を可愛そうに思ってか(笑)、
おすすめすると「じゃあいっぺん食べてみよか」とオーダーしていただくお客様が徐々に
増えていったのです。
そして今では、ランチタイムは開店30分で売り切れ、
夜に至ってはひとテーブル必ずひとつはご注文いただく看板メニューとなったのです。

とは言え、まだまだ豚タンが何かご存じないお客様も多く、
現在でも【とんタンの味噌焼推進運動】は地道に続いています。
壁に貼ってある『とんタンの味噌焼』情報もそのひとつ。
今後は、お持ち帰り頂いてお読みいただける“豚タンまめ知識”なるものを作り、もっともっと
『とんタンの味噌焼』について知っていただけたらなぁ、と思っております。
まだまだ成長過程の看板メニューですが、これからも応援していただけるとうれしいです。

本格焼酎とぶた肉料理/日日是耕日の女将  政友智恵美


とんタンの味噌焼ができるまで

【1】まずとんタンの皮を一本一本丁寧に剥きます。
“剥く”といってもこれが結構大変で、タンの表面の皮の部分を
そぎ落としていく感じ。
こうすることで舌触りが滑らかになります。大変だけど手を抜けない作業のひとつ。

とんタンの味噌焼ができるまで工程1

【2】皮の剥けたタンを少し厚めにスライス。
次にスライスしたタンの真ん中を開き、一枚を大きくします。
とんタンは牛タンと比べて小さいので一枚の面積を大きくするためにこの作業をします。

とんタンの味噌焼ができるまで工程2

【3】スライスしたタンを肉たたきでたたいて、
味噌の味を染み込みやすくします。
あまりたたき過ぎると肉の弾力がなくなるのでほどほどに…。

とんタンの味噌焼ができるまで工程3

【4】西京味噌をベースに作ったオリジナルの味噌床に、
『タンを敷き詰め→上から味噌を塗り→キッチンペーパーでフタをする』という作業を繰り返し、タンと味噌の層を作ります。これを一晩じっくり寝かせれば【にちにち名物!とんタンの味噌焼】の完成です!

とんタンの味噌焼ができるまで工程4

とんタンの味噌焼の秘密

“一日限定10食”のとんタンの味噌焼には、実はこんな秘密があったんです。

一日に仕込める量はとんタン30本が限界!

とんタンの味噌焼ができるまでには、これだけの手間と時間がかかるため、一日に仕込める量は頑張ってタン30本が限界。夜のお客様の分を考えるとランチでは“一日限定10食”が限界なんです。 「本当は10食以上あるんでしょ~」なんてお声をいただくこともあるんですが、ウソじゃないんですよ。

一人前ナント豚1.5頭分!

これは一人前の『とんタンの味噌焼』に使われるタンの量。たった5枚と思われるかも知れませんが、これで豚1.5頭分なんです。『とんタンの味噌焼』がお好きなみなさん、あなたは今までに豚何頭分食べましたか?

雨の日はチャンス!

ランチタイムはオープン30分で完売!の『とんタンの味噌焼』ですが、雨の日はチャ~ンス! 12時半を過ぎても残っていることもしばしば。「もう無いんだろうなぁ…」などとあきらめずにお気軽におたずねくださいね。

とんタンの味噌焼の美味しい食べ方

ちょっとしたことですが、こうしてお召し上がりいただくと“旨さ倍層”です。

添えられた白髪ねぎをタンの中央にのせ、二つ折りにしてはさみます。

下矢印

お皿の端っこにちょこんとのっているからし(洋からしと柚子胡椒をまぜたもの)をほんの少しつけて

下矢印

思い切ってひと口で頬張ります。あとは心ゆくまでかみしめてください。
噛むほどにタンの旨みが口一杯に広がり幸せな気持ちに…。

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